チンチラの症例

チンチラの脛骨骨折手術(創外固定法)

脛骨(後足の膝から下の骨)を骨折してしまったチンチラちゃんが来院されました。

うさぎやチンチラなど草食性の小型哺乳動物は骨が非常にもろく折れやすいため、よく骨折を主訴に来院されます。

チンチラの脛骨骨折は、小動物の骨折の中でも特に起こりやすい外傷です。チンチラの骨は細くもろいため、ジャンプや落下、誤って足を引っ掛けたときなど、比較的軽い衝撃でも骨折してしまうことがあります。

脛骨骨折の原因

  1. 高所からの落下:チンチラはジャンプや高い場所に登る習性があるため、ケージの棚や遊び場から落下した際に骨折することがあります。
  2. ケージや遊具での引っ掛かり:足がケージや玩具に引っかかったり、着地時に不安定になったりすると、脛骨に負担がかかり骨折の原因になります。
  3. 乱暴な扱い:抱き上げ方や持ち方を間違えると、予期せぬ反応で足をバタつかせ、骨折することもあります。

 

脛骨骨折の症状

  • 足を引きずる、または地面につけない
  • 腫れや痛みを示し、触れると嫌がる
  • 活動性の低下や、食欲減退などのストレス反応

 

治療方法

チンチラの骨折は非常に繊細な処置が必要で、適切な治療をしないと骨が正しく治らない可能性があります。治療方法は、骨折の位置や重症度により異なりますが、以下のような方法が一般的です

  1. 固定(ギプスやスプリント)
    軽度の骨折であれば、足を固定して自然治癒を促す方法が取られることが多いです。しかし、チンチラは小柄で骨が細いため、ギプスなどでの固定は難しい場合があります。
  2. 外科手術
    重度の骨折や位置が複雑な場合、ピンやワイヤーで骨を固定する外科的処置が必要です。これには麻酔が必要で、回復には慎重なケアが求められます。
  3. 痛み管理
    骨折による痛みを和らげるために、獣医師が鎮痛剤を処方することがあります。痛みの管理は、回復を促進し、ストレスを軽減するために重要です。

 

回復期間とケア

回復には数週間から数か月かかることがあり、特にチンチラの骨は再生が遅い傾向があります。この間は活動を制限し、静かな場所で安静に過ごさせることが推奨されます。

予防策

  • ケージ内の高さを抑える、または棚を配置して落下防止対策をする
  • 足を引っ掛けやすい細かい網や隙間がないケージを選ぶ
  • 安全な遊び場を確保し、動きやすい環境を整える

今回のチンチラちゃんは不運な事にへやんぽ(お部屋をお散歩)中に物が落下してきてしまい肢に当たり、骨折してしまったとのこと。

当院ではCTスキャンを導入しており、骨がどのように折れているのか?骨に亀裂が入っていないか?どのように整復固定を行えば良いのか?など手術前に3D画像を見てシュミレーションを行うようになり、より精度の高い手術が出来るようになりました。

↑CT画像:左後足の膝から下の骨(脛骨、腓骨)が折れています。

 

↑麻酔を掛けて寝て貰います。衝撃で皮膚が裂けて骨が一部飛び出した跡が見られました。

 

↑手術前に骨の各部位の長さを測定して手術のシュミレーションを行います。体重が400g程度と小さく、骨や組織がもろく、骨の太さも細い箇所では3mm程度しか無く、犬猫の骨折手術と比較すると要求される技術的な難易度が数段高いと思います。

 

↑手術前に骨の各部位の長さを測定して手術のシュミレーションを行います。

 

↑小型動物用の創外固定用ポジティブハーフピン(0.9mm径)と髄内ピン(0.8mm径)を用いて固定を行いました。ピンを骨に挿入する前に下孔をドリルで開けておかないと、骨が割れてしまう恐れがあるので注意が必要です。

創外固定にはエポキシ樹脂を用いています。皮膚に孔が開いていなければ感染のリスクが低いのでプレート法の準備をしていましたが、皮膚に穿孔創が見られたことから感染に強い創外固定法を今回は採用しました。

↑問題なく麻酔からも覚めてお家へ帰っていってくれたので良かったです。あとは感染などの問題が起きずに骨が癒合してくれるのを祈るばかりです。小さい体でよく頑張ってくれました。

 

垂水オアシス動物病院

獣医師 井尻