犬の症例

陰嚢ヘルニアのコーギーちゃんが来院されました。

大阪にある動物病院の先生からのご紹介で、当院にて手術を希望されて来院されたのでした。

さっそく診察させて頂くと、後ろ足の付け根辺りの鼠径部が腫れており、加えて、左側の陰嚢もかなり腫れている様子。

これは「陰嚢ヘルニア」と呼ばれる状況になっている可能性が高そうです。

ヘルニアというと、多くの人が首や腰の痛みを思い浮かべるかもしれません。

しかし、本来の「ヘルニア」とは、体内に本来存在する孔や、何らかの原因でできた異常な裂孔から腹部の臓器などが飛び出してしまう状態を指します。

首や腰の痛みは「椎間板ヘルニア」と呼ばれますが、犬や猫に多い他のヘルニアには、へそが膨らむ「臍ヘルニア」(いわゆる出べそ)や、股のあたり(鼠径部)に膨らみができる「鼠径ヘルニア」などがあります。

今回の「陰嚢ヘルニア」は珍しいヘルニアで、普段診察をしていてもほとんど見かけることは無いので、発生率が低いタイプのレアヘルニアだと思います。

軽度のヘルニアの場合、経過観察のみで管理されることもありますが、重度の場合は腸が飛び出して便が排出されなくなったり、食欲不振になるなどの症状が現れることがあり、その場合は手術が必要です。

手術では、飛び出した内臓を元に戻し、鼠径輪を閉じる処置を行います。鼠径輪周辺の筋肉を縫い合わせることで穴を閉じることができますが、縫合だけでは穴が完全にふさがらない場合は、医療用のメッシュ(網)を使用して補強することもあります。

手術後は、通常は正常な状態に戻り、経過は良好なことが多いです。

今回の子の場合も、去勢手術を済ませた後にヘルニア部を切開して飛び出していた脂肪をお腹の中に押し戻して、縫合すれば問題無く整復することができました。