犬の症例

マルチーズのTPLO(前十字靭帯断裂)

マルチーズの前十字靭帯断裂の治療(TPLO)がありました。以前は大型犬をメインにTPLOを実施していましたが、この頃は小型犬用のインプラントも発売されており、小型犬でも問題無くTPLOを実施できるようになっています。

↑手術前:前十字靭帯が断裂していました

↑TPLOの手術後のレントゲン画像

 

TPLO(Tibial Plateau Leveling Osteotomy、脛骨高平部水平化骨切り術)は、犬の膝十字靭帯(CCL、Cranial Cruciate Ligament)断裂に対する外科的治療法の一つです。以下にTPLOの詳細を説明します。

 

TPLOとは

TPLOは、犬の膝関節内で脛骨(Tibia)の傾斜を変えることによって、膝十字靭帯が損傷しているにもかかわらず、膝関節が安定するようにする手術です。具体的には、脛骨の上部(脛骨高平部、Tibial Plateau)を切り取り、角度を変えてプレートで再固定することで、膝関節の前方滑りを防ぎます。

 

目的と効果
TPLOの主な目的は、前十字靭帯断裂によって生じる膝関節の不安定性を改善し、犬が再び正常に歩けるようにすることです。前十時靭帯断裂は、犬の歩行困難や痛みを引き起こし、放置すると関節炎が進行することがあります。TPLOにより関節の安定性が改善されると、痛みの軽減や機能の回復が期待できます。

 

手術の手順
麻酔:犬は全身麻酔を施されます。
切開:膝関節を露出するために皮膚と筋肉を切開します。
骨切り:脛骨の高平部を術前計画に従って特定の角度で切ります。
回転:切り取った部分を回転させ、適切な位置に再配置します。
固定:金属プレートとスクリューを使用して、新しい位置に固定します。
閉鎖:切開部を縫合し、手術を終了します。

術後の管理
術後は、数週間から数ヶ月のリハビリが必要です。

安静:最初の数週間は運動を制限し、安静を保ちます。
リハビリ運動:徐々に軽い運動を再開し、関節の柔軟性と筋力を回復させます。
定期的なチェック:獣医による定期的なチェックとX線検査が行われ、骨癒合の状態を確認します。

通常、2~3か月程度で骨癒合が認められます。

合併症とリスク
TPLOは一般的に成功率が高い手術です。感染、金属プレートやスクリューの問題、術後の炎症などの合併症は5-10%程度の犬で発生する可能性がありますが、これらは多くの場合、適切な治療で管理可能です。

 

成功率

TPLO手術の成功率は90%以上と報告されています。これは、手術を受けた犬の多くが術後に正常な歩行を取り戻し、生活の質が向上することを意味します。
TPLO手術は非常に高い成功率を持つ治療法で、多くの犬が術後に快適な生活を送ることができます。手術を検討する際は、具体的なリスクや治療計画について獣医師と十分に相談してください。

 

 

垂水オアシス動物病院

獣医師 井尻