子猫の骨盤骨折
早速レントゲン画像を見させて頂くと、骨盤の骨が骨折してしまっています。おそらく車にひかれたようで命があるのは奇跡的だと思われます。
↑骨盤の骨(座骨)が割れてしまっています。
CTスキャンでみると、右側の骨盤が成長板のところで骨折しているのが確認できました。
レントゲン検査とCT検査の画像を参照して手術を行いました。骨盤は立体的な骨ですので、CTスキャンは術前計画を立てるのにかなり有効です。
↑髄内ピンと背側からの創外固定で整復しました。股関節の辺りは座骨の辺りから大転子まで皮膚切開を行いアプローチし、座骨神経に注意しながら骨折端を合わせて、逆行性に髄内ピンを設置しました。その後、腸骨翼と座骨にピンを挿入し簡易な創外固定を設置しました。髄内ピンだけでは固定強度が弱いため、髄内ピンと創外固定を併用することにしました。
その後は順調に回復しており、調子も良くお家の中を走り回っている(術後は安静にすることが大切です)とのことだったのですが、術後2週目にいきんでおり便が出にくいということで来院されました。レントゲン検査をしてみると髄内ピンが緩んで抜けてきてしまい骨盤が狭くなっていることが考えられたため、背側から創外固定を追加して骨盤が狭くならないように固定することにしました。既に問題無く歩ける状態なのでこのまま様子を見ても歩き方には問題は生じないのですが、子猫ちゃんの場合はそのまま経過を見ていると骨盤が狭くなったまま骨が癒合してしまい、将来的に重度の便秘に悩まされるケースが多くあり、そのような事態を避けるために手術を行うことになりました。
成長期には骨の成長を妨げてしまい、強固に固定することができるプレート法が使えないため、後からでも簡単に抜去できる創外固定法で固定しました。骨盤の骨折は血流が豊富なためすぐに骨が癒合します。ただし、変な形で癒合してしまうと後々便秘になるなど困った事態になってしまいます。
今回のケースでは、骨盤狭窄による便秘を治すためには、成長期の今のうちに骨盤を広げておくか、骨の成長が止まってから(大人になってから)骨盤の骨を切って広げるか、の選択肢がありましたが、後からだともっと大変な手術になるため若いうちに可能な限り治しておく方が良いと考え手術を行っています。
LAT像:骨盤を固定していた髄内ピンを抜き、背側から創外固定法で骨盤を固定しました。
VD像:骨盤腔が広がりました。(腸骨翼の左右の頭側部分を鉗子で挟んで骨盤をハの字に広げ、座骨側はゲルピーで広げた状態で維持しておき、背側から創外固定ピンを骨盤の骨に刺入しエポキシパテで固定)
手術翌日には便もスムーズに出るようになり、調子も良いとのことでホッとしました。大きな問題が起きなければ手術後3~4週間後には骨が癒合するため、ピンを抜いて治療終了になります。