犬の症例

モンテジア骨折の犬

今回はモンテジア骨折が生じてしまった犬が来院されたのでこの件について。

モンテジア骨折は、前腕部の骨折と脱臼が同時に起こる重度の損傷で、犬にも発生することがあります。この骨折は、名前の由来となった「モンテジア骨折脱臼」に類似した状態で、主に橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)の前腕骨と、肘関節の異常を伴うことが多いです。

以前にマンションから落下した猫ちゃんでモンテジア骨折を生じた子が来院されて、手術を行ったことがありましたが、この様式の骨折は犬ではだいぶ珍しいと思います。

↑橈骨頭が肘関節から脱臼していました

↑尺骨が骨折し、橈骨頭が前方へ脱臼していました

↑手術後の様子:尺骨尾側から橈骨へスクリューで固定しました

↑手術後の様子:はじめは尺骨尾側から橈骨に向けてスクリュー2本を挿入して固定していたのですが、活動性が高く術後の安静が保てずスクリューが緩んでしまったため、スクリューを抜いたあとのスクリューホールにナイロン糸を通すことで輪状靭帯の代わりにして橈骨と尺骨を固定しました。尺骨は2.5mm程度とかなり細いものの、1mm径のスクリューを用いて整復固定ができました。翌日には負重して歩けるようになったため、包帯を巻いて安静を指示し退院しました。

1. モンテジア骨折とは

モンテジア骨折脱臼は、次の特徴を持つ状態を指します

  • 尺骨の骨折
    尺骨のどこか(通常は上部または中央)に骨折があります。
  • 橈骨頭の脱臼
    肘関節の一部である橈骨頭(肘の近くの骨の端)が脱臼し、正常な位置から外れています。

これらの損傷は、通常、外傷性の力(高所からの落下や交通事故など)によって引き起こされます。


2. 原因

犬のモンテジア骨折の原因として、以下が挙げられます

  • 交通事故
    強い外部の衝撃により、前腕の骨と肘関節に同時に損傷が起こる。
  • 高所からの落下
    着地時の衝撃で前脚が過剰に曲げられたり伸ばされたりする。
  • 激しい捻り
    スポーツや遊び中の捻挫や不自然な動き。

3. 症状

モンテジア骨折の犬では以下の症状が見られます

  • 歩行困難
    前脚を地面につけられず、激しい痛みを伴う。
  • 前脚の変形
    明らかに腕の形が変形している場合があります。
  • 腫れと痛み
    腫れがあり、触ると強い痛みを示します。
  • 肘関節の異常な動き
    肘が不自然な方向に曲がっている、または動きに制限があります。

4. 診断方法

獣医師が診断する際の手順:

  1. 身体検査
    腫れ、痛み、変形、脱臼を確認。
  2. X線検査(レントゲン)
    骨折の位置や程度、脱臼の状態を詳細に確認。
  3. CTスキャン(場合による)
    関節や周囲の骨の状態をさらに詳しく見る場合に使用。

5. 治療法

モンテジア骨折は重度の損傷であるため、通常、手術が必要です。以下が一般的な治療手順です

骨折の修復
骨折した尺骨をプレートやピン、ワイヤーで固定します。

  1. 脱臼の整復
    脱臼した橈骨頭を元の正しい位置に戻し、関節を安定化させます。
  2. 固定
    手術後、前腕を固定するためにスプリントや包帯を使用します。
  3. 術後ケア
    骨が完全に癒合するまで、運動を制限し、炎症や痛みを軽減するための薬物治療を行います。

6. リハビリと予後

  • リハビリテーション
    可動域を回復するために、理学療法(軽いストレッチや関節運動)を行います。
  • 予後
    適切な治療を受ければ、多くの場合で良好な回復が見込まれます。ただし、治療が遅れると肘関節の異常や慢性的な痛みを引き起こす可能性があります。

7. 注意点

  • 早期治療が重要
    時間が経過すると脱臼や骨折が複雑化し、治療が難しくなる可能性があります。
  • 運動制限
    術後は完全回復まで運動を制限することが必要です。

まとめ

犬のモンテジア骨折は外傷性の重度な損傷であり、放置すると痛みや機能障害を引き起こします。早急に獣医師の診断と治療を受けることが重要です。適切な処置とリハビリを行えば回復が可能なことが多いです。