診療案内

当院では膝蓋骨脱臼の治療に力を入れておりまして、膝蓋骨脱臼でお困りのワンちゃんがよく来院されています。膝蓋骨脱臼と一言でいっても、重症度も様々なため、全ての犬で治療が必要な訳ではないのですが、足を痛がっていたり、挙げたりしているような症状がある場合は治療をお勧めすることがあります。

今回来院されたワンちゃんも跛行などの症状が見られたため、整復手術を実施することになりました。

↑手術後の様子。膝蓋骨が滑車溝にきちんと収まっており、跛行の症状も治まりました。

通常では骨が癒合するのに２～３か月程度掛かるため、その期間は安静が必要になります。

犬の膝蓋骨脱臼（しつがいこつだっきゅう）は、膝のお皿（膝蓋骨）が正常な位置からずれてしまう状態です。これは特に小型犬に多く見られる整形外科的な問題で、遺伝的な要因や外傷が原因で発生することがあります。

膝蓋骨脱臼の種類
膝蓋骨脱臼には、内側脱臼と外側脱臼の2つのタイプがあります。

内側脱臼：膝蓋骨が膝の内側に外れる状態。小型犬（チワワ、トイプードル、パグなど）に多い。
外側脱臼：膝蓋骨が膝の外側に外れる状態。大型犬や中型犬に多く見られますが、小型犬でも発生します。

症状
膝蓋骨脱臼の症状は、軽度から重度まで様々です。症状の程度により、4つのグレードに分類されます。

グレード1：膝蓋骨が手で押すと外れるが、すぐに自然に戻る。ほとんど症状はなく、軽度の異常のみ。
グレード2：膝蓋骨が自動的に外れたり戻ったりする。歩行中に一時的に足を持ち上げるような仕草が見られる。
グレード3：膝蓋骨が常に外れた状態だが、手で押せば元の位置に戻る。歩行に支障があり、跛行（びっこを引く）が見られることが多い。
グレード4：膝蓋骨が常に外れた状態で、手で押しても戻らない。著しい痛みや歩行困難を伴う。

原因
膝蓋骨脱臼の原因は、主に以下の通りです。

遺伝的要因：骨や関節の形成不全が遺伝的に引き継がれることがあり、特に小型犬種で見られます。
外傷：事故や激しい運動による外傷が原因で膝蓋骨が脱臼することがあります。
筋力不足や姿勢不良：筋肉のアンバランスや骨の構造異常が脱臼を引き起こすこともあります。

治療
治療は脱臼の程度や犬の症状により異なります。軽度の場合は生活習慣の改善や運動制限で対処することがありますが、重度の場合は外科的治療が必要になることがあります。

軽度（グレード1～2）

運動制限：激しい運動やジャンプを避けることが推奨されます。
体重管理：体重を適切に保つことで、膝への負担を軽減します。
サプリメント：グルコサミンやコンドロイチンのような関節サプリメントを使用して関節の健康をサポートします。
リハビリテーション：筋肉を強化するための理学療法（マッサージやストレッチ）が効果的です。
重度（グレード3～4）：

外科手術：膝蓋骨を正常な位置に固定し、再脱臼を防ぐために手術が行われます。一般的な手術方法には、以下があります：
脛骨の矯正
軟部組織の再配置
関節溝の深さを調整する手術（滑車溝成形術）

まとめ
膝蓋骨脱臼は、犬にとって痛みや不快感を引き起こす可能性があります。症状の程度に応じた治療や生活習慣の見直しで、犬の快適な生活をサポートできます。早期に獣医師に相談し、適切な治療を行うことが重要です。